「選択」がわたしを作る~本「選択」の科学

今まで 見向きもしなかったビジネス書。「金持ち父さん 貧乏父さん」など ハウツーものが気になるようになりました。フリーで働くには、仕事に対するモチベーションを保つ必要があるので、つい ふらふらとそんな本に依存しそうになる。手に取りましたが、何冊読んでも一緒です。一冊の本なり、格言を 肝に銘じる、もしくは ちゃんと実践する方が大切。知識を磨く本を読もうと思いました。
しかし、そういったビジネス書の根拠となるデータは、大学で実験してるのですね。

「選択の科学」
コロンビア大学ビジネススクール特別講義

シーナ・アイエンガー教授

ジャムを選択する実験。

 著者が行った実験の中でもっとも多く引用され、応用されている実験が紹介されていました。
アメリカの品揃え豊富なスーパーで、ジャムの試食コーナーを設置。
2パターンの試食コーナーをでどちらが売上がいいか実験しました。
ウィルキン&サンズの28種類のジャムのうち

1.24種類 試食可能な場合

2.6種類だけ試食可能な場合

24種類のときは、買い物客の60%が試食に立ち寄った。
6種類のときの買い物客は、40%しか訪れなかった。
24種類の時も6種類の時も、試食客が試食したジャムは平均2種類程度だった。
試食した人には、割引クーポン券を配った。
それでは、1・2の場合 実際にジャム売り場に訪れ、そこでジャムを選び、レジで支払いしたひとは、どっちが多かったのでしょう。あなたならどう行動しますか。
6種類の試食に立ち寄った客のうち、ジャムを購入したのは30%だったが、24種類の試食の場合、実際にジャムを購入したのは、試食客のわずか3%だったのです。実験データでは、パーセンテージしか記載ありませんでしたが、仮に100人のお客様が来店したとすると

100人×60%×3%=2人弱

100人×40%×30%=12人

6倍以上の差が!

たしかに、品揃えの多いお店で、特定の商品を試食・試飲してますね。
私たちは、選択肢がないと不満を抱きますが、選択肢が多すぎでも困惑し、選択しないという行動にでます。
こういった行動も科学され、ビジネスに応用されているとは驚きでした。

 「選択」に作用するもの

一番怖いなぁと思ったのは、自分が「選択」した結果に囚われ、自分が望んでいたのだとつじつまを合わせる心理が働き、行動を鈍らせる場合もあることです。
イソップ物語の「すっぱいブドウ」のお話がおぼえていますか?
キツネはどうにかしてブドウを取ろうとして、しばらくの間がんばってみるが、どうしても届かない。そこでキツネはあきらめ、こんな負け惜しみを言って立ち去ります。
「あのブドウは、どうせ酸っぱいに決まってるさ。」
キツネの心変わりは、わたしたちが選択した行動とつじつまを合わせるために本能的に取る方法の典型例です。

イソップ物語 奥が深い・・・・

著者は、両親がインドからの移民でシーク教徒。3歳の時、目の疾患を診断され、高校に上がる頃には全盲となった女性です。
著者が、盲目でありながら 緻密な実験・考察・執筆をこなしていることにも驚きです。
原題は「The Art of choosing」

境遇を強く生き抜いた彼女だからこそ、「選択」を前向きに捉え、科学の力を借りて選択を行うこともできるが、(いま話題のAIは、その可能性がありそう)それでも選択が本質的に芸術であり、力や神秘、そして並外れた美しさが備わっていると 締めくくっています。

本の感想

選択が ヒトをカタチつくる。キツネみたいに 本心を誤魔化さないよう 気を引き締めます・・・
また、ジャムの話は、打合せのツールに応用しようと思いました。
インテリア商品は無限にありますが、おすすめをちゃんとピックアップしておきます!

ヘンな日本美術史~山口 晃 のヘタな絵の話

パースを仕事で描いてはいますが、絵の技術はお粗末で、パースの技法を使わないと 物の形も決まりません。陰影も 感覚だけで付けてるし・・・

しかし、絵かきではないのだから、お客様にイメージが伝わればいいのだ!! と 開き直っているのですが・・・

絵の技法をきちんと学びたいなぁ と憧れもあります。

そんな私にぴったり! 絵の技法のなんたるか
その上、絵の技法を知っているからこそ解る絵の鑑賞法を
この本で知ることができます。

ただし、技術が低いのに、価値が高い絵の話もあり面白かったです。

へんな日本美術史
山口晃著
祥伝社出版

私など、美術館に展示してある絵は 全て「貴重なもの」と
ハハーと水戸黄門の印籠のような感じで すごいものなんだ と思っちゃいます。

ところが、美術館にも 素人同然の「ヘタな絵」があるそうです。

松姫物語絵巻

松姫物語
東洋大学附属図書館
デジタルコレクションより

私も 練習すれば 描けるかしら・・・

山口 晃氏の言も

今の言葉で言う「下手うま」ですらなく、単に「下手くそ」なのですが、そうは言っても見られる下手さであるという所が特色でしょうか。「見られる下手さ」と云うのは、少しは上手いと云うのではなく、より下手なのです。

そんなこと あるの~! おもしろすぎる!!のですが、どうしてそんな絵が16世紀の室町時代から現在まで残ってるのか、ちゃんと考察してあります。

当時の割合お金持ちの人が、良い紙に良い墨、良い絵具で、字なども能書家を雇ってちゃんと書いているのに、絵だけをどうしようもない素人に描かせるという趣向がどうもあったらしいというのです。

なぜ下手な絵を愛でたのか

当時の身分の高い人が、一方で 様式美の域に達した狩野派などの絵を愛でつつ、愛らしいもの(今の感覚では、アニメ文化?)も趣向品として人気があったようです。

それをふまえますと・・・

日本人の美意識って 相当レベル 高いですよね! 西洋より時代の上をいってたんじゃない?と本を読みながらうきうきしました。西洋では、ルネサンスを経て、ポップアートやプリミティブアートの光が当たったのは、現代のことです。室町時代の松姫物語の絵は、ポップアートやプリミティブアートより もっと倒錯した美の感覚かもしれません。

日本建築も 数寄屋造り など 相当へんな建築物、わざと素朴なものを銘木として床柱に使う 倒錯した美意識が 行われています。

ちょっと空間を崩す方が こなれてる感じ ありますよね。(クラッシクスタイルのシンメトリーばかりじゃ 疲れる・・・)

これって、日本人の美意識に通じるのかなぁ・・・

 

 

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