無垢床材の魅力 

以前勤めていたホルツェン神戸は、エコ建材を扱う会社でした。もともと、北欧(スェーデンやノルウェー)から床材やドアを輸入する商社でしたが、自然素材の建材を紹介するうちに、北欧やドイツの環境に対する意識の高さに触れ、エコ建材を中心としたラインナップとなりました。

北欧パイン無垢床材は、循環型


産地であるスェーデンでは、パインの森が畑のように管理されています。木を伐採する量を定め、それに応じて植林する循環型のシステムです。山の多い日本に比べ、森が平地にあるので重機が使いやすく、機械化も進んでいました。
しかしながら、スェーデンから日本まではるばる 船で運んでくる材料なので、地産地消の考えから批判されることもありました。今では、杉の無垢床材が、エコ建材の代表でしょうか。日本の森も、スェーデンのように循環型の森になったらいいなぁ。実際、日本の里山を守ろうと地道に努力されている林業組合も多くなっています。それでも、住宅の流通量からすると採用件数は少数派ですが・・・

クレームの嵐?!

エコ建材として自信を持ってお届けできるパイン床材でしたが、日本の市場では、なかなか受け入れられませんでした。

「無塗装です。現場でオイル塗装お願いします。」
「現場で床貼ってから塗るんか!手間代はどうするんや!」

「節がいっぱいあります。節の穴が空いた部分は、カットしてください。」
「不良品を売るんか!なめとんか!」

「木が伸び縮みするので、壁から空かして施工してください。」
「大工が責任持てんと言ってる!施工する大工 連れてこい!」

現場に納品する前から、こんな調子です。
施工した後も いろいろあって

「溝に隙間が出来た!」
(自然素材だから・・・と思いつつ 謝る)

「お醤油こぼしたら、シミになって取れない!」
(オイル仕上げだから、早く拭かないと・・・と思いつつ 謝る)

「お客さんが、イメージと違うと言ってる!」
(自然素材とのコーディネートに問題が・・・と思いつつ 謝る)

何度、現場まで謝りに行ったことか・・・。
同僚と 売りたくないよねと愚痴をこぼしていました。が、自然素材が注目され出した頃で、雑誌に掲載されるなど、問い合わせが後を立ちませんでした。

自然素材の魅力

それでも、エコ意識の高い建築家の方から愛用者が増え、自然素材を前向きに採用する工務店とご縁ができていきました。

2度と使うか!と捨て台詞を言われることもありましたが、その場合、現場に行くと パイン床材が、かわいそうなぐらい ダサい!!

反対に、雑誌に載るような著名な建築家の方に採用していただくと、なんて素敵なパイン床材なんでしょう!!と 惚れ惚れします。自然素材の触感や均一でない豊かな表情が、「味わい」と「深み」を与えています。

同じ材料なのに、どこが違うんだろう・・・・と不思議に思っていたのですが、

だんだんと 理由がわかってきました。

オイル仕上げの質感を理解すること。質感です!!

ファッションでいうと 麻のワンピースを素敵に着こなせるかどうかです。

無垢材は、経年変化で飴色に変化し、「味わい深く」なります。
パイン床材を販売しているときは、素敵にしてくれる方、大切にしてくれる方のところに嫁いでね!と 子供をお嫁に出す気分で、仕事していました。
クレームは多かったけど、無垢材の魅力を知ると、自分の子供のように愛おしいです。

シックハウスになる前に

シックハウス症候群をご存知でしょうか。

シックハウス症候群とは、新築の住居で起こる 頭痛・喉の痛みなどの症状が現れる健康不良の呼び名です。建材に含まれる揮発性の化学物質がシックハウスの原因とされ、新築で使われる建材に関心が高まりました。

以前勤めていたホルツェン神戸は、シックハウスが問題になった当時、エコ建材しか扱わない会社として注目され、雑誌などの特集に掲載されました。いろいろなイベントや展示会にご招待頂き、その分野で活躍する大学教授や建築家とお話しする機会もありました。また、シックハウス症候群の方からのご相談にのるお仕事もさせていただきました。

シックハウス症候群の方は ちょっとした匂いにも反応します。症状が出て(頭痛・吐き気など)電車に乗ることもできません。人に話しかけられても、逃ださずにいられないのです。お化粧の匂いや整髪料といったありきたりの匂いにも我慢できずに・・・話しかけた人がびっくりしますよね。私も仕事でお会いする時は、化粧を控え、整髪料も天然のオイルなど、気を配りました。日常生活が普通に送れないことで、職を失う方もいらっしゃいました。

シックハウスを問題提起し、「ナチュラルハウスをつくろう」著者の足立和郎先生が、ホルツェン神戸のアドバイザーでもありました。ご本人もシックハウス症候群に悩まされており、エコ建材で、シックハウス症候群を克服できると 全て自然素材を使った家を新築しましたが、より症状が悪くなってしまいました。高野槙でできた風呂桶、杉の無垢材、土壁、自然由来であっても、匂い(揮発性物質)に反応するようです。

では、自然素材は、シックハウス問題に 役に立たないのでしょうか。

実際に シックハウス症候群の方に 原因を聞くと

職場で火事があり、大量の煙を吸った後から 症状がでた方
着物の染色の仕事をしていた過去があり、化学染料に触れる機会が多かった方
もちろん、新築をきっかけに症状がでた方もいらっしゃいました。

どうも、人体には、許容量というものがあるようです。
個人個人、発症の可能性はあるが、どこまで溜め込んでいるか 生活環境だけでなく体質も深く関わっています。

許容量のイメージ

ひとりだけ、シックハウス症候群を好転させた看護師の方にお会いしました。北里大学病院のアドバイスで、とにかく汗をかく努力をされたとのことです。サウナスーツを着て、雑巾がけなど家中を動き回って 汗を出したそうです。
汗をかくことは、解毒作用として重要だと改めて知りました。

私も、化学物質の匂いに敏感で、花粉症もありアレルギー体質といえます。改装したての店舗など、接着剤や塗料に揮発性の化学物質が使われています。匂いがきつく感じる時は、長居を避け、開店から時間をおいて行くようにしています。体調が悪化する恐れがあると知っていれば、対処の仕方があります。

人体からの警告を見逃さない ことが一番大切です。

出来るだけ 気をつけたいこと

  1. 揮発性の化学物質を避ける
  2. 汗をかくなど、人体の解毒作用を活発に行う
  3. 食べ物・飲み物は、添加物の少ないものを選ぶ
  4. シャンプーや歯磨き粉などはシンプルな原料で充分、宣伝に惑わされない
  5. 自分の体調に敏感になる

本来なら、木の香りは、リラックス効果があります。自然の香りと人工的な香りの差を肌で感じます。

自分の身体に素直に反応して、純度の高い暮らしをしたいものです。

 

健康・エコ住宅の話

シックハウス症候群をご存知でしょうか。

シックハウス症候群とは、新築の住居で起こる 頭痛・喉の痛みなどの症状が現れる健康不良の呼び名です。建材に含まれる揮発性の化学物質がシックハウスの原因とされ、新築で使われる建材に関心が高まりました。

シックハウスという言葉が世に知れ渡ったのは、日本では、2000年前後でした。それまで、健康不良の原因が、家にあるという認識がなかったため、原因不明で困っていた方には、朗報だったと思います。

実は、スウェーデンでは、1970年にはもう、シックハウス対策が行われていました。

どうして、スウェーデンとシックハウスの話?と思いでしょうが、日本がたどった「カビ」に対する対策と スウェーデンがとった「カビ」に対する対策の違いに注目して欲しいからなんです。

スウェーデンの住宅

スウェーデンでは、北欧の寒い国で暖房が欠かせず、室内と室外の温度差が30度以上になります。住宅に断熱材が欠かせない地域です。

ところが、断熱材を使うと 「カビ」が発生しやすくなるのです。壁の内部や窓の結露が 「カビ」の原因となるからです。

そこで、スウェーデンは、断熱材を使っても「カビ」が発生しない施工法を探求しました。

①壁の中のカビ対策・・・・防湿シートの施工

②室内のカビ対策・・・・空気をかき混ぜる(換気システムの導入)

そして、上記①・②の精度を高めるために、気密性を重視しました。

こうして、スエーデンは、高気密・高断熱住宅が発達しました。続いて、ドイツやカナダなど、高気密・高断熱住宅が広まりました。比較的、家の性能が雑だとされる北米でも、防湿シートの施工は、中間検査で義務化されているほどです。(アメリカの建材は、雑でした・・・日本と感覚が違うようです。)

1970年頃の日本の対策はどうでしょう?日本においても 断熱材を壁の中に施工することが多くなってきました。そうなると、やはり「カビ」が発生するようになりました。

日本のとった対策は、防カビ剤の添加された新建材の開発です。

スウェーデンに比べ、外気との温度差も少ないですし、部屋全体を暖める生活スタイルでもないので、これで十分でした。対策となる費用も少なくて済みます。(ちなみに北海道では、早くから高気密・高断熱住宅が一般化し、本州とは違った流れです。寒いですもんね・・・)

しかし、だんだんと問題になってきたのが、「カビ」の救世主である新建材だったのです。

新建材に含まれる揮発性の化学物質により室内の空気が汚染され、健康被害が問題になってきました。シックハウス症候群です。

今では、シックハウス対策規制法が成立、防蟻剤として使用されていたクロルピリホスは、使用禁止となりました。接着剤として使用が多かった毒性の強いホルムアルデヒドは、規制対象とされています。

また各建材メーカーも 揮発性化学物質の排除が進みました。厚生省が、指針値として示した他の化学物質に対処しているようです。

私は、シックハウス症候群ではないのですが、化学物質で頭痛がすることもあります。店舗の改装直後の臭いは苦手で避けているのですが、最近の新築住宅では、臭いを感じることがほとんどありません。昔に比べ、住宅に対しては、対策が進んでいると思います。

もちろん、シックハウス対策規制法が守られた住宅が、揮発性化学物質がまったくなわけではありません。敏感な方は、より揮発性化学物質のない建材を選ぶ必要があります。

ただ、健康住宅 イコール 自然素材を使えばOK には疑問があるのです。

自然素材を使うには、「カビ」の発生しない 室内環境作りが重要です。

健康住宅を語る上で、スウェーデンの辿っってきたシックハウス対策は、原因の根本的解決方法でした。日本の場合、携帯電話のガラパゴス化といい、技術力があるだけに、根本の解決からそれる傾向があるのでしょうか?

スウェーデンでは、現在も自然素材がたっぷり使われています。日本は、自然素材はクレームになるので、進化した(揮発性物質の少ない)新建材が主流です。スウェーデンの「カビ」に対する対応を考えると「カビ」の悪玉を自然素材のせいにするのは あまりに悲しい・・。

自然素材を選ぶときは、結露が発生しない施工方法が大切です。

防湿シートを施工し内部結露を防ぐか、自然素材だけで呼吸する壁を構成します。(リフォームでは、特に下地に注意する必要がります。)

ぜひ、自然素材をショールームで体感していただけたらと思います。使い方のコツが解かれば、決して使いにくい建材ではありません。

そして、「室内環境」に気を配って 自然素材とお付き合いいただければ、新建材では味わえない 豊かな空間 が出現しますよ!

私は、杉の無垢板や塗り壁・板張りが大好きです。五感を触発する本物の素材で、なんだか落ち着く感覚をデザインに組み込めたらと思います。

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